【この記事のポイント】
- 課題: 衛生管理上スマートフォンを持ち込めない食品工場内で、本社とのコミュニケーションに大きな手間と時間がかかっていた。
- 解決策: 自社開発の VPN ユニットでセキュリティ要件をクリアし、SIP インターホンによる通話システムを構築。さらにカメラの内蔵マイク/スピーカーを活用し、担当者不在時もスマホで応答できる仕組みを追加。
- 成果: 現場の作業を止めずに、いつでも、どこにいる担当者とでも、円滑な双方向コミュニケーションが可能となり、生産性が向上。
1. お客様の課題:「スマホ持ち込み禁止」が招くコミュニケーションロス
クリーンな環境が第一に求められる食品工場では、外部からの異物混入を防ぐため、私物のスマートフォンの持ち込みが厳しく制限されています。
今回ご相談いただいたお客様の工場も例外ではありませんでした。製造ラインで発生した品質に関する疑問点や設備の細かな調整について本社に確認が必要な際、作業員は以下の手順を踏む必要がありました。
- 作業を中断し、製造エリアから退出する。
- 更衣室にある自分のロッカーへ向かう。
- スマートフォンを取り出し、本社へ電話する。
この一連の動作が、一日に何度も発生しており、大きなタイムロスと生産性の低下を招いていました。「工場内にいながら、もっと手軽に本社と連絡を取り合える仕組みが欲しい」というのが、お客様の切実なご要望でした。
2. 第一次提案と、立ちはだかった「セキュリティの壁」
私たちはまず、工場側にSIP インターホン、本社側にSIP 電話機を設置し、インターネット経由で通話するシステムをご提案しました。ボタン一つで本社を呼び出し、ハンズフリーで会話ができる、シンプルで使いやすい構成です。
【システム構成】

SIP とは? Session Initiation Protocol の略。インターネット上で音声通話やビデオ通話を行うための標準的な「通信ルール(プロトコル)」の一つです。
しかし、この構成には一つ大きなハードルがありました。SIP で安定した通信を行うには、一般的にファイアウォールで複数のポートを開放する必要があります。お客様のセキュリティポリシー上、「用途が明確でない多数のポートを外部に開放することは認められない」という厳しい制約があったのです。また、既存のルーターやプロバイダー契約の変更もできない状況でした。
3. 解決策について
解決策 ①:自社開発「拠点間接続システム」で、ポート開放不要のセキュアな通信路を構築
そこで私たちは、このセキュリティの壁を乗り越えるため、手軽に VPN 環境を構築できる小型の「拠点間接続システム」を自社開発しました。
VPN とは? Virtual Private Network の略。インターネット上に、関係者しか利用できない仮想的な専用トンネルを作り、安全にデータをやり取りする技術です。
この拠点間接続システム用の遠隔伝送ユニットを食品工場と本社のルーターにそれぞれ接続するだけで、両拠点間はあたかも同じ LAN 内にあるかのように、安全に通信できます。これにより、ポートを一切開放することなく、SIP インターホンと SIP 電話機をセキュアに接続することに成功しました。
参考技術記事
この結果、工場内の作業員はインターホンのボタンを押すだけで、いつでも本社とクリアな音声で双方向通話が可能となり、コミュニケーションロスは劇的に改善されました。

解決策 ②:追加要望に応える「もう一つの通話ルート」
システム導入後、お客様から新たなご要望が寄せられました。 「本社の担当者が席を外していたり、外出していたりすることも多い。そういった場合でも、担当者のスマートフォンで応答できると更に助かる」
この追加のご要望に対し、私たちはマイクとスピーカーを内蔵したネットワークカメラを工場内に設置することを提案しました。
このカメラは、専用のスマートフォンアプリを介して双方向通話が可能です。つまり、本社の担当者が電話機に出られない場合でも、工場側は代わりにカメラに呼びかけることで、担当者のスマートフォンと直接会話ができるようになります。
【最終的なハイブリッドシステム】
- 通常時(担当者在席時): 工場インターホン → 本社 SIP 電話機 (ハンズフリーで高品質な通話)
- 緊急時・担当者不在時: 工場カメラ → 担当者スマートフォン(場所を問わず応答可能)
これにより、あらゆる状況に対応できる、柔軟で確実なコミュニケーション体制が完成しました。

アイゼックの強み:最適な「組み合わせ」で課題を解決します
今回の事例のように、私たちはお客様の課題に対し、常に最もシンプルで費用対効果の高い解決策を模索します。
- 汎用品の活用: SIP インターホンやネットワークカメラといった、広く普及している汎用品の機能を最大限に活用し、コストを抑えます。
- カスタム開発力: 汎用品だけでは解決できない「隙間」の課題(今回の VPN 構築など)に対しては、自社開発の機器やソフトウェアで的確に補います。
既製品とカスタム開発品の最適な「組み合わせ」によって、お客様のご要望に 100%応えること。それがシステムインテグレーターであるアイゼックの強みです。
工場内のコミュニケーション改善や、セキュリティと利便性を両立させるシステムにご興味がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
